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猫で注意したい猫汎白血球減少症って何?

獣医師
相澤啓介
[記事公開日]  [最終更新日]
猫汎白血球減少症は子猫で特に注意すべき感染症の一つです。
消化器症状によって突然衰弱し、致命的となりうる怖ろしい病気です。
本記事では猫汎白血球減少症の症状から診断、治療、予後、予防まで解説していきます。
[ 目次 ]
猫で注意したい猫汎白血球減少症って何?
猫汎白血球減少症は世界中で発生があり、欧米ではワクチンで予防すべきコアウイルス病に指定されています。
病原性及び感染性が強く、特に子猫での死亡率が高いことが特徴です。
日本でもしばしば発生が見られ、決して他人事ではない感染症ですが、猫汎白血球減少症がどんな病気か説明できる人は少ないのではないでしょうか。
そこで本記事では、猫汎白血球減少症の症状、感染経路、診断、治療、予防まで解説していきます。

猫汎白血球減少症とは

猫パルボウイルスによって引き起こされる感染症で、出血性の下痢と白血球減少を特徴とします。
特に子猫での死亡率は極めて高く、感染しないよう予防することが重要となっています。
日本でも度々、ペットショップやブリーダーなどでの集団発生が起こることがあり、問題となります。

猫汎白血球減少症の症状

移行抗体のなくなった子猫において、全身症状と消化器症状を主徴とします。

・発熱
・突然の衰弱
・嘔吐
・出血性下痢
・脱水
・運動失調(小脳形成不全による)
・視力障害(網膜形成異常による)
・流死産(妊娠猫の場合)

猫汎白血球減少症の感染経路

感染猫の排泄物(尿、糞便、吐物、眼分泌物など)や、それらによって汚染された食器などから直接または間接的に経口感染します。

ワクチン接種前の多頭飼育環境では、新しい猫を迎え入れる際には十分に注意が必要です。

猫で注意したい猫汎白血球減少症って何?

猫汎白血球減少症の診断

糞便中に含まれるウイルスを分離することで確定診断を行います。
糞便を用いた犬用のパルボウイルス検出キットがありますが、猫の場合では検出率が高くなく、陰性であっても感染を除外することができません。
よって確実な診断結果を得るためには、糞便を検査会社に送ることになります。
また、血清中の抗体測定も診断の補助に役立ちますが、これらは検査結果がわかるまでに時間がかかるため、先行して治療を行っていきます。

・血液検査
血液検査によって、白血球の減少が見られることが本症を疑う所見です。
白血球の数は猫では5,000~15,000個/µlが正常ですが、本症急性期では2,000個/µlまで白血球が減少します。
白血球の減少によって免疫力が落ちるため、他の感染症の併発に注意が必要です。

猫汎白血球減少症の治療

猫パルボウイルスを直接排除する特効薬はありませんので、それぞれの症状に応じた対症療法を行います。

・抗菌薬
白血球減少による感染症の併発の防止のため、抗菌薬を投与します。
特に子猫の場合は二次性の細菌感染による敗血症が致命的となるため、抗菌薬の投与は重要です。

・インターフェロン療法
猫インターフェロンの注射投与がウイルス増殖を抑制したという報告があります。
現在では猫汎白血球減少症を始めとする種々のウイルス感染症で用いられている治療法です。

・輸液療法
嘔吐や下痢によって喪失した水分と電解質を補うために十分な静脈点滴を行います。
また、嘔吐が顕著な場合には制吐薬を併用し、これ以上の水分や電解質の喪失を防ぎます。

猫汎白血球減少症の予後

特に生後3ヵ月以内の子猫では予後は非常に悪く、その致死率は90%以上という報告もあります。
一方成猫では予後は悪くなく、適切な治療がなされれば1週間程で回復すると言われています。
もちろん早期発見と早期治療が行われた場合ですので、日常の観察で何か異常が見られたらすぐに動物病院を受診してください。

猫汎白血球減少症の予防

・ワクチンの定期接種
猫の混合ワクチンの定期的な接種によって、猫汎白血球減少症の予防が可能です。
ワクチンには、ウイルスそのものを弱くして接種する弱毒生ワクチンと、ウイルスの病原性と感染性をなくした不活化ワクチンがあります。
妊娠中の猫では、弱毒生ワクチンを用いると子猫の小脳低形成を引き起こすおそれがあるため、不活化ワクチンを用います。

・生活環境の徹底した衛生管理
多頭飼育の場合には、排泄物などによって感染猫から他の猫に容易に感染が成立します。
感染が疑われる猫は隔離し、食器や水飲み場、トイレを消毒します。
ウイルスは環境中で長期間の生存が可能で、通常の消毒薬にも抵抗性を示します。
よって消毒の際には、希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用します。
また、人間が外環境からウイルスを持ち込む可能性もあるため、室内飼育だからと言って安心はできません。

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