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世界の野生ネコ:イエネコの進化の歴史を知る

キャットケアスペシャリスト
増田暢子
[記事公開日] 2019-11-20 [最終更新日] 2019-11-20
私たちの身近で暮らしている猫は、ネコ科動物の中でも最も最後に分岐したイエネコ系統に属しているイエネコという種です。そして、イエネコは野生の習性を色濃く残したまま進化してきました。つまり、ネコ科動物の進化や現生の野生ネコを知ることは、身近な猫の習性を知る手がかりになるはずです。
世界の野生ネコ:イエネコの進化の歴史を知る

野生のネコを知ることはイエネコの進化の歴史を知ること

私たちが一緒に暮らしている猫は、ネコ科の動物の中で最も最後に分岐したイエネコ系統に属しているイエネコという種です。そして、イエネコは南極大陸を除く全ての主要大陸と世界の大半の島に生息していることから、地球上で最も成功した哺乳類の一つだと言われています。人に依存している、いないにかかわらず、イエネコは砂漠から亜南極諸島までのありとあらゆる環境に対応して、生活しているのです。

このように私たちの身近にいる猫は、その祖先であるリビアヤマネコの野生の習性を色濃く残したまま家畜化され、現在に至っているということも、よく知られた話です。つまり、現生の野生ネコを知ることは、ネコ科の動物が進化してきた歩みを知ることであり、かつ猫の中に粛々と受け継がれている野生の習性を知る手がかりにもなると言えるでしょう。

今回は、ネコの進化と現生の野生ネコについて紹介します。

原始ネコの流れ

約3000万年前にユーラシア大陸に現れたプロアイルルスが、最初のネコ科動物だと言われています。プロアイルルスの最古の化石は、フランスのサンジェラン・ル・ピュイで発見されました。この地は、当時は広大な亜熱帯林でした。

そして、約1800〜2000万年前までに、プロアイルルスは2つの属に分岐しました。この2つの属が、ネコ科動物の進化系統樹における主要な枝になりました。一方は、サーベルタイガーの祖先、もう一方が、現生するネコ亜科の祖先です。

サーベルタイガーは、その名の通りサーベル状の長い剣のような犬歯が有名ですが、他にも他のネコ科動物とは異なった頭骨や骨格を持つ、数多くの属が排出され、ユーラシア、アフリカ、南北アメリカでかなり最近まで繁栄していました。サーベルタイガーの中でも有名なスミロドンは、1万年前まで北米と南米に生息しており、特に南米に生息していたスミロドンは、現生するいかなるネコ科動物をもはるかに上回る巨大さを誇っていました。

現生ネコであるネコ亜科も、サーベルタイガーと並行して繁栄していきました。こちらは、円錐形の犬歯を持った、比較的小型の猫として発展していきました。そして、約1100万年前に、ユーラシアで急速に適応放散が始まり、次々と現生するネコ科の全系統が生まれ、現在の8系統となりました。
*適応放散:同類の生物がさまざまな環境に適応することで多様に分岐し、多数の異なった系統に分かれること

世界の野生ネコ

1. ヒョウ系統
ネコ亜科の祖先から約1100万年前に分岐した最も古い系統に属し、ヒョウ系統の祖先は約640万年前に生まれました。大型ネコと呼ばれており、ウンピョウ属のスンダウンピョウ、ウンピョウと、ヒョウ属のユキヒョウ、トラ、ジャガー、ヒョウ、ライオンの7種に分類されます。

ヒョウ系統の野生ネコは、ユキヒョウとウンピョウを除き、吠えることが特徴です。他のネコ科動物とは喉頭と舌骨の構造が異なるためだと考えられています。そのかわり、イエネコのように喉をゴロゴロと鳴らすことはできません。逆に、ヒョウ系統の中で吠えることができないユキヒョウとウンピョウは、喉をゴロゴロと鳴らすことができます。

2. ベイキャット系統
約940万年前に分岐した系統に属し、ベイキャット系統の祖先は約540万年前に生まれました。東南アジアに分布しており、単独種のマーブルドキャット属と、アジアゴールデンキャット属のベイキャット、アジアゴールデンキャットの3種に分類されます。

ベイキャットはボルネオ固有種で、生息地が重なっているネコ科のどの種とも似ていません。形態が似ているアジアゴールデンキャットは、ボルネオ島には分布していません。残念ながら、ベイキャット系統のネコ達はあまり研究が進んでおらず、その習性などはあまり知られていません。

3. カラカル系統
約850万年前に分岐した系統に属し、カラカル系統の祖先は約560万年前に生まれました。アフリカとアジアに分布しており、単独種のサーバル属と、カラカル属のアフリカゴールデンキャット、カラカルの3種に分類されます。

サーバルは特大のパラボラアンテナのような耳が、カラカルは大きなよく目立つ耳と耳先の黒い房毛が特徴的です。アフリカゴールデンキャットも、生まれた直後は耳にカラカルのような房毛が生えていますが、生後2〜3ヶ月で消えてしまいます。

4. オセロット系統
約800万年前に分岐した系統に属し、オセロット系統の祖先は約290万年前に生まれました。主に中南米に分布しています。オセロット、マーゲイ、パンパスキャット、アンデスキャット、タイガーキャット、サザンタイガーキャット、コドコド、ジョフロイキャットの8種に分類され、属は一つだけです。

ネコ科動物の染色体は通常38本ですが、この系統は36本です。

5. オオヤマネコ系統
約720万年前に分岐した系統に属し、オオヤマネコ系統の祖先は約320万年前に生まれました。温帯ユーラシアと北米に分布し、丸くて短い尾と耳の房毛が特徴です。ボブキャット、カナダオオヤマネコ、ユーラシアオオヤマネコ、スペインオオヤマネコの4種に分類され、属は一つだけです。

オオヤマネコ系統は、ネコ科の中でも捕食の専門性が最も高いと言われています。この系統で最も大型のユーラシアオオヤマネコは有蹄動物を専門に捕食し、ボブキャットは体重が0.7〜5.5kgの小型脊椎動物が食物の大半を占めます。また、スペインオオヤマネコは食物の75〜93%をアナウサギに、カナダオオヤマネコは食物の35〜97%をカンジキウサギに依存しています。

6. ピューマ系統
約670万年前に分岐した系統に属し、ピューマ系統の祖先は約490万年前に生まれました。北米で発生したと考えられていますが、現在はアジア・アフリカと北中南米に分布しています。チーター、ジャガランディ、ピューマの3種に分類され、それぞれが単独の種で属を形成しています。

ピューマはヒョウ系統以外のネコ科では最大で、ヒョウと同等の大きさですが、小型ネコが進化して大型化したものです。またチーターは、ネコ科で唯一、高速で長く獲物を追跡することに適応した形態をしており、他のネコとは異なる体躯をしています。そして、他のネコのように、爪を隠す肉厚の鞘がありません。

7. ベンガルヤマネコ系統
約620万年前に分岐した系統に属し、ベンガルヤマネコの祖先は約590万年前に生まれました。熱帯・温帯アジアに分布しています。マヌル属のマヌルネコ、ベンガルヤマネコ属のサビイロネコ、マレーヤマネコ、スナドリネコ、ベンガルヤマネコの5種に分類されます。

動物園で人気のマヌルネコですが、その進化的関係はほとんど分かっていません。ベンガルヤマネコ属とイエネコ属の中間に位置しているという証拠もあるようですが、通常はベンガルヤマネコ系統に分類されています。

8. イエネコ系統
約340万年前に分岐した最も新しい系統で、イエネコの祖先も340万年前に生まれました。野生ネコはアフリカとユーラシアに分布しており、ジャングルキャット、クロアシネコ、スナネコ、ハイイロネコ、ヨーロッパヤマネコの5種に分類され、属は一つだけです。

進化系統樹そのものについて、今なお活発な議論が繰り広げられていますが、ヨーロッパヤマネコの分類についても同様です。ヨーロッパヤマネコは、現在では19の亜種が挙げられていますが、私たちの身近で生活している猫(イエネコ)の祖先であるリビアヤマネコも、ヨーロッパヤマネコの亜種とされています。

厳しい野生ネコの現状

世界で飼われている猫の数は、10億を超えていると言われています。そして、最も多い推定値を採用しても、野生ネコの個体総数は飼い猫の1%(1000万頭)だと言われており、その大半は小型で分布域が広く、適応力も高いボブキャットやベンガルヤマネコです。

IUCN絶滅危惧種レッドリストでは、個体数、脅威の程度、個体数の増減率などの条件に基づき、保全状況を評価しています。評価のレベルは絶滅(EX)から低懸念(LC)まで7段階に分かれており、ネコ科は全ての種で評価されています。その状況は厳しいものが多く、場合によっては一部の地域や亜種のレベルで評価をされているものもあります。たとえば、ライオンは種全体としては「絶滅危惧・危急(VU)」(5番目)の評価ですが、アフリカ西部のライオンに対しては「絶滅危惧・深刻な危機(CR)」(3番目)という評価が出されています。

ネコはいずれも完全肉食動物であり、食物連鎖の頂点や高い位置にいるものも多く、彼らの絶滅は生態系の崩壊にもつながります。決して個人の力で野生ネコの絶滅を救うことはできませんが、何かできることがあるはずです。猫を愛する身としては、猫も野生ネコも、同じように保全されるようにしたいものです。

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