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猫の健康診断シーズン到来。どんな検査が必要?猫への負担は?

獣医師
山口あすか
[記事公開日]  [最終更新日]
猫は人のように話せることもなく、かつ犬に比べて不調を隠す動物であることから、症状が出て飼い主さまが気づくころには重症になっていることが多くあります。

「大人しい性格なのかと思っていました、、、」
「年を取ったからなのかと、、、、」
「前々からお水はよく飲むけれど、、、、」

上記のように、飼い主さまからすると劇的な変化ではないものが最初のサインです。
ゆっくりと進行している猫の病気に気づかずに、じわじわと悪化してしまっているのが猫の慢性疾患の怖いところです。

猫は他の動物よりも健康診断を活用する必要があります。
[ 目次 ]
猫の健康診断シーズン到来。どんな検査が必要?猫への負担は?
この記事では、猫の健康診断の必要性、隠れているけれど進行している病気、スコティッシュフォールドには特に必要な検査、検査による猫への負担について解説します。

今までは猫の健康診断の必要性を感じていなかった飼い主さまも、興味はあっても受けていなかった飼い主さまも、すでに健康診断を受けている飼い主さまも、この記事によって、健康診断が猫にとってどれだけ大切なのかを確認しておきましょう。

猫の健康診断の必要性

猫は不調であるときに、明らかな症状が出ることは少なく、「いつもより少し動かない」くらいの変化にとどまってしまうことが多くあります。
人であれば体がだるくて動きたくない、というような状況では、猫はじっとして体力を温存する、という対処をしてしまいます。

これが犬であれば、散歩に行った時に元気がない、あるいは、いつも走ってくるのに歩いていて変だ、などの違和感に飼い主さまが気づくことが多いのですが、猫は散歩などのイベントも無いために軽症では気づかれないことが殆どです。
人のように不調を言葉で訴えることもなく、じっとすることで症状を隠してしまう猫という動物には、検査によって隠れた病気がないのかの確認がとても大切になるのです。

猫の健康診断シーズン到来。どんな検査が必要?猫への負担は?

隠れて進行している猫の慢性疾患とは

期症状がほとんど確認されないまま、気づいたときには重症になっていて、治療が後手に回ってしまう病気を以下にあげました。
無症状の段階で、健康診断で発見することによって、早期治療ができれば寿命が長くなることも多くあります。


①関節炎

猫は8歳くらいになると関節炎が出始めていることをご存知でしょうか?
12歳の猫の90%に関節炎が見られるという報告もあります。
人も加齢性の関節炎で、膝が痛い、節々が痛い、という症状がありますが、猫も同様に痛みや不快感を感じています。

すると、だんだんと上下運動を嫌がるようになり、なるべく関節に負担をかけないように、動きを制限するようになります。
それにより足腰の筋肉が減少してしまって、関節を補助する機能も減少し、もっと関節炎が酷くなってしまうという悪循環になっていきます。

あまり遊びに乗ってこなくなったな、爪研ぎが下手になっているな、高い場所に乗らなくなったな、と思ったら関節炎のサインかもしれません。

関節炎は、問診(飼い主様から話を聞く)とレントゲン検査によって診断することができます。


②肥大型心筋症

あまり多い病気ではありませんが、ノルウェイジャンやメインクーン、スコティッシュフォールド、アメリカンショートヘアーなどの洋猫の純血種に多い傾向にあります。
他の慢性疾患とくらべると、若齢期から始まっていることが多く、若い時からの健康診断の大切さを思い知る病気です。

犬であれば心臓疾患は、体調を無視して走り回ることによってすぐに不調になって、病気は発覚することが多いのですが、猫は自分の体調をしっかりと優先して無理をしない生活をするので、心臓疾患に気づけないことが多くあります。

心臓疾患は、猫で発覚する時にはかなり進行して重症(命に関わるような状態)になっていることがあり、早期発見と早期治療が最も大切です。

検査としては、聴診(心臓や肺の音を聞く)、胸部レントゲン検査、心電図検査、血圧測定、血液検査(心臓のバイオマーカーなども)、そして最も大切なのが心エコー検査です。


③腎不全

高齢になると、猫も腎不全を発症することが多くなります。
発症とはつまり症状が出る状況のことを言いますが、これは腎機能の75%が失われてから発覚します。

逆を言うと、腎不全の症状(食欲不振、吐き気、便秘など)が出ている時には、腎臓の機能は25%も残っていないことが殆どです。

高齢期では、塩分を控え、飲水量の保持(寒い時期にはウエットフードも使用など)して、健康診断を受けることによって、腎機能の低下がみられないかをチェックしましょう。
検査では、血液検査(SDMA:早期腎不全マーカーも含む)、尿検査(尿比重、尿蛋白、UPCも含む)、血圧検査、腎臓エコー検査が実施されます。

猫の健康診断シーズン到来。どんな検査が必要?猫への負担は?

スコティッシュフォールドは1歳からでも健康診断が必要

近年、その愛らしさから飼育頭数が増えているスコティッシュフォールドは、他の猫種と比べて最初から病気を発症しているというのは、飼い主様には知っておいて欲しい事実です。

耳が折れているのがスコティッシュフォールドの可愛さを強調するポイントの一つですが、それが病気の発症のサインなのです。
つまり、病気だから耳が折れている、とも言えます。
生まれつき、軟骨の異形成(変な所に軟骨がある)があるために、耳が折れているのがスコティッシュフォールドです。

え?生まれつきに病気だなんて、酷くないですか?
という気持ちになるかと思います。
けれど、病気があるのは事実であり、スコティッシュフォールドさんの飼い主様には、それを知っていただき、一歳からでも健康診断を受けていただく必要があります。

 生後6カ月から関節炎が発症する可能性があるので、問診と触診、関節のレントゲン検査は受けるようにしましょう。
また、肥大型心筋症も発症するリスクが高いので、血液検査で心臓のバイオマーカー(心筋トロポニンや、必要ならNt-ProBNP)、胸部レントゲン検査も必要です。
それらから、肥大型心筋症の可能性が高いと判断されれば、心エコー検査も実施しましょう。

生まれつきに腎機能が低いスコティッシュフォールドさんもいるので、尿検査、血液検査、必要であれば腎臓エコー検査も受けた方が良いでしょう。

猫の健康診断シーズン到来。どんな検査が必要?猫への負担は?

猫に負担の少ない検査とは

私ごとで言えば、飼っている猫が激しくシャイで嫌なことは嫌と言える素敵な性格(正直に言えば、病院に行くと性格が豹変して噛む、そしてきっと暴れる)だったために、本当に必要が無ければ病院に行きたくない!という飼い主様の気持ちがよくわかります。

何も症状が無いのに健康診断受けるのは猫にストレスだわ、、、とためらう飼い主様も多いかと思います。
ということで、まずは猫にストレスの少ない検査から実施していきましょう。

【尿検査】
オシッコだけを病院に提出するため猫へのストレスはゼロです。
この検査によって、早期の腎不全のサイン、尿路結石(ストルバイトやシュウ酸カルシウム)のサイン、糖尿病、膀胱炎など様々な病気を見つけることができます。

ただし、採尿が家で出来ない場合には、病院でのカテーテル(細いチューブ)での採尿や、膀胱穿刺(びっくりなことにお腹に針を刺して膀胱から採尿)が必要になってしまいます。
家で採尿できるように、色々工夫してみましょう。

【便検査】
こちらも便だけを病院に提出するだけなので、猫への負担はゼロです。
簡易検査では、寄生虫や虫卵を見つけたり、らせん菌などが増えていないかなどを確認します。

しっかりとした検査では外部の検査センターに送ると遺伝子レベルでの病原性ウイルス、細菌、寄生虫の感染を調べることができます。

【レントゲン検査】
来院の必要はありますが、撮影は一瞬であり、レントゲンの照射もごく僅かなため、猫への負担はかなり少ない検査です。
関節炎のサイン、膀胱結石や腎臓結石、心臓形態や気管支や肺の異常も検出することができます。

ただ、レントゲン検査だけで確定できる病気は少ないため、これをきっかけに追加検査をして確定するという流れが一般的です。

【血液検査】
実は採血も細い針なのでチクっとした痛みもあまりなく、じっとしている時間も10~20秒であり、猫への負担は少ない検査です。
それにより発見できる病気は多く、肝臓や腎臓の不調、貧血や炎症の有無、甲状腺ホルモンの測定や、心臓のバイオマーカー測定など、とても有用性のある検査です。


【エコー(超音波)検査】
人では、妊娠時の胎児の検診などが馴染み深い検査かと思います。
痛みもなく、傷(針さしや被ばくなど)もないため、人ではよく実施されます。

しかし!しかし動物ではそう簡単なものではありません。
まず体毛が多いとエコー検査には向かないので、毛刈りを実施させてもらうことも多いです。
ただじっと動かなければ、それだけで良いのですが、それが動物には苦痛な場合もあり、採血やレントゲン検査のような一瞬の不動化ではなく、5~20分ほどは動かないでもらう必要があるのです。

関節炎のある猫には、足や手を持たれることがすでに痛みを出すことも多く、本人の状態と性格によって負担の度合いは大きく変わるでしょう。
それでも、たくさんの病気を確定することが出来る検査なので、必要であれば実施しなければなりません。

猫の健康診断シーズン到来。どんな検査が必要?猫への負担は?

まとめ

猫健康診断がとれだけのストレスになるのか、どれだけ大切なのかは、それぞれの猫によって大きく異なるでしょう。

スコティッシュフォールドは、若齢から関節が痛いために、採血やレントゲン検査など一瞬の保定でも辛そうなので、心が痛んでなりません。
しかしそれでも心疾患などは特に、早く見つけておかなければ治療や対処も後手になってしまうのも事実です。

あれもこれも、何でも検査すれば良いということではありません。
負担の少ない検査から始めて、必要であればより正確な検査に進んでいくという形で進めてもらうのが、健康診断では適切かと考えます。

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