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犬の肺高血圧症って何?どんな病気なのかを解説‼

獣医師
相澤啓介
[記事公開日]  [最終更新日]
犬の肺高血圧症は心疾患や呼吸器疾患から移行する病態で、高血圧と名のつく通り、肺に走っている血管にかかる圧力が高くなる状態です。
肺高血圧症は循環や呼吸に関わる臓器への負担が大きくなり、治療を行わないと命に関わってくる疾患です。
特に近年、犬の寿命が延びてきたことによって心疾患の数もまた増えています。
肺高血圧症に対する正しい理解を得て、それに移行しないように心疾患の治療に臨んで頂ければと思います。
[ 目次 ]
犬の肺高血圧症って何?どんな病気なのかを解説‼
血液の循環において血管抵抗が増大し、血圧が上昇する状態を高血圧といい、それによって何らかの症状が現れることを高血圧症といいます。
血管は酸素や栄養を運ぶために全身に走っており、肺もまた例外ではありません。
肺の血管抵抗の増加によって、肺の血圧が上昇する状態を肺高血圧といいます。
肺高血圧は循環機能だけでなく呼吸機能にも関わっており、時には命に関わる怖ろしい病態です。
犬の肺高血圧症には早期の治療が必要不可欠となりますが、早期発見には何が必要なのでしょうか。
本記事では犬の肺高血圧症の症状、診断、治療から予後まで解説していきます。
最後まで読んで頂き、犬の肺高血圧症とは何なのか理解して欲しいと思います。

犬の肺高血圧とは?

血液は、全身から静脈を通って心臓へと戻ってきます。
その後、心臓から肺動脈を取って肺へと送られ、肺から肺静脈を通って酸素を受け取り、心臓へと戻り、動脈を取って再び全身へと送り出されます。
末梢の血管の血圧が高い状態を全身性高血圧、肺に繋がる肺動脈の血圧が高い状態を肺高血圧といいます。
肺高血圧は、血管収縮因子(エンドセリン)と血管拡張因子(一酸化窒素など)のアンバランスや低酸素血症、呼吸器疾患の続発によって発生します。
しかしその中でも、心臓の僧帽弁閉鎖不全症に続発する肺高血圧症が近年問題となっています。

肺高血圧症の好発犬種と好発年齢

僧帽弁閉鎖不全症は、中年齢から高年齢での発症が多い疾患です。
この中で肺高血圧症の併発率は14~39%と報告されており、重症度が高いほど併発率も高くなる傾向があります。
もちろん、全ての犬が肺高血圧症を併発するわけではありませんが、僧帽弁閉鎖不全症を発症しやすい犬種であるキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルはリスクが高いと言えます。

犬の肺高血圧症の症状

肺の高血圧によって心臓に負担がかかり、それによって心不全症状が現れます。
主な症状は以下のようなものです。

・元気消失
・食欲減退
・運動不耐性(疲れやすくなる)
・発咳~呼吸困難
・失神
・チアノーゼ(舌などの粘膜が青くなる)
・腹水貯留

これらは心臓弁膜症である僧帽弁閉鎖不全症及び三尖弁閉鎖不全症の症状です。
肺高血圧が進行するとこれらの症状は進行し、特に三尖弁逆流は増大します。

犬の肺高血圧症って何?どんな病気なのかを解説‼

犬の肺高血圧症の診断

ヒトの肺高血圧症の診断には、心カテーテル検査が必要不可欠です。
しかし犬の場合、検査には全身麻酔が必要となり、制約が大きいために心超音波検査を用いた方法が広く用いられています。
また心機能と同時に肺高血圧の重症度も評価し、その後の治療に繋げていきます。

・身体検査
聴診によって心臓の雑音や呼吸音の異常を聴取することがあります。
また、呼吸器疾患や心疾患が基礎疾患として認められる場合には、低酸素血症によるチアノーゼが見られる場合もあります。

・胸部単純X線検査
僧帽弁や三尖弁の異常によって心臓の拡大所見が得られます。
また、胸腔内異常所見の検出やうっ血性心不全の検出が可能ですが、肺高血圧症の診断としては精度が高いものではありません。
あくまで肺高血圧症の元となっている基礎疾患の補助診断として用いられます。

・心超音波検査
犬の肺高血圧症の診断ツールとして一般的で、重症度評価も超音波検査にて行います。
肺高血圧症の診断は、肺動脈圧の推定によります。
肺動脈圧は、三尖弁を逆流する血流の速度から推定することが可能です。
この逆流速から肺高血圧の重症度も評価していきます。
また、心不全徴候や胸水/腹水の貯留も同時に評価することで原因疾患の精査も行うことができます。

・CT検査
CT検査では、肺高血圧症を疑う所見、鑑別診断、原因疾患の検出が目的となります。
この原因疾患としては、肺疾患、血栓塞栓症、腫瘍性疾患などが含まれます。
しかしCT検査には全身麻酔が必要となるため、重度の低酸素血症の場合にはリスクが高くなるという問題があります。

犬の肺高血圧症の治療

直接肺血管の血圧を下降させる治療と、肺高血圧を引き起こしている原因疾患の治療を同時に行っていきます。
治療効果の判定のために、定期的な検査も必要となってきます。

・肺血管拡張薬
犬ではシルデナフィルという薬剤の臨床研究がなされています。
シルデナフィルの投与によって、うっ血性右心不全、失神、運動不耐性、発咳などの症状が改善されたという報告があります、
副作用も少ないことから、犬の肺高血圧症の治療薬として一般的に用いられています。
しかし現在、日本の獣医療においてシルデナフィルの入手は困難となっており、すべての動物病院で取り扱っているわけではないことに注意が必要です。

・右心不全に対する治療
腹水や胸水貯留に対して利尿薬が用いられます。
この際には腎臓への負担を考え、血液検査や尿検査にて腎機能をモニターしながら投与します。
また、強心薬であるピモベンダンも有効なことがあります。

・基礎疾患の治療
他にも僧帽弁閉鎖不全症、フィラリア症、慢性呼吸器疾患などが肺高血圧症を引き起こすことが知られています。
これら基礎疾患の存在が示唆された場合には、これらに対する治療も積極的に行っていきます。

犬の肺高血圧症の予後

肺高血圧症は心疾患や呼吸器疾患の末期的な状態で、一般的に予後は悪いと言われています。
そのため、肺高血圧症に移行する前に種々の疾患をしっかりと治療することが重要となります。
年齢を重ねた犬では、定期的に健康診断を受けることをオススメします。

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