ウィズぺティウィズぺティ
初めての方へ会員登録ログイン買い物かご
健康ライブラリー > 猫の肥満と食事療法

猫の肥満と食事療法

獣医師
若林薫
[記事公開日]  [最終更新日]
 最近、肥満のねこちゃんが増えています。肥満は病気のリスクを上げる要素です。肥満に関係する病気と、食事療法によるダイエットの方法などについてわかりやすく説明しました。
[ 目次 ]
猫の肥満と食事療法
 なんだか最近ねこちゃんのお腹が太い気がする、そんなことはないでしょうか?ねこちゃんの肥満は糖尿病などの病気を引き起こしてしまうことがあります。健康を害する肥満と戦うためには、飼い主さんの正しい知識と毅然とした態度が大事になります。この記事では、ねこちゃんの肥満とはどのようなものなのか、どういう病気が引き起こされるのか、また、ダイエットを成功させるためにはどうすればいいのか、といった内容についてわかりやすく説明をしています。

猫の肥満

 近年、ねこちゃんの肥満が増加していると言われています。動物病院に来院する1~3割のねこちゃんが肥満傾向にあるとの報告もあります。肥満とは具体的にどのような状態なのでしょうか?ねこちゃんは体重が5.5kgを超えると肥満だと言われています。また、飼い主さんのねこに対する肥満の認識は48.3%であると報告されています。隠れ肥満のねこちゃんが多くいるということです。たかが肥満ですが、されど肥満です。肥満はいくつかのやっかいな病気を引き起こす可能性があります。一度、ねこちゃんの体重をチェックしてみるといいでしょう。

猫の肥満と食事療法

肥満による病気

 ねこちゃんの肥満は糖尿病や肝リピドーシスなどの病気を引き起こすことがあります。これらの病気は内分泌・代謝性疾患と呼ばれています。外傷によるケガや、咳や鼻水などの症状がある風邪に比べて、いまいちどのような病気なのかイメージがしにくいかもしれません。内分泌や栄養素の代謝は身体を維持するための最も大事な柱のうちのひとつです。これらが乱れることは、ねこちゃんにとって大変なことなのです。

◇猫の糖尿病
 インスリンと呼ばれるホルモンがあります。これは血液中に流れる糖を細胞に吸収させる効果があり、他のホルモンで代用ができない大事な物質です。糖尿病とはインスリンの分泌が低下してしまう、またインスリンの効果を細胞が正しく受け取ることができなくなる病気です。糖尿病は血糖値が上がる病気ですが、この病気のもっとも恐ろしい側面は細胞が生きていくために必要な糖を吸収できなくなるということです。
ねこちゃんは糖尿病の発症率が0.25~4%であると言われています。これは、犬での発症率が0.0005~1.5%であることから、比較的高リスクな動物であると言えるでしょう。肥満のねこちゃんでは糖尿病を発症するリスクは更に高まります。糖尿病が発症してしまうと、白内障や糖尿病性神経症、肝リピドーシスなどの様々な合併症を引き起こす場合があるだけではなく、定期的なインスリン注射を一生しなければなりません。

◇猫の肝リピドーシス
 肝臓は身体の中の様々な栄養素の代謝を行う重要な臓器です。なにかしらの理由でこの栄養素の代謝のバランスが崩れ、多量の脂肪が蓄積してしまう病気を肝リピドーシスと言います。肝リピドーシスでは、脂肪により肝臓が2~3倍に腫大し、脂肪含有量が正常では5%であったものが50%まで上昇する場合があります。肝臓の働きが弱まってしまう為、食欲不振、嘔吐、下痢・便秘などの様々な症状を引き起こします。肥満のねこちゃんでは肝リピドーシスのリスクが高まります。また、先述した糖尿病の合併症として肝リピドーシスが起こる場合もあります。肝リピドーシスは治療が難しい病気です。肝リピドーシスの治療では食事療法により体内の栄養素の代謝を正常に戻す必要があります。しかし、食欲不振のねこちゃんは食事療法食を食べない場合が多く、強制給餌をしなければならない場合があります。

猫の肥満と食事療法

ダイエットと食事療法

 肥満によって引き起こされる病気はやっかいなものばかりです。太めのねこちゃんはぜひダイエットをしたほうがいいでしょう。私達人間のダイエットでも言えることですが、ダイエットを成功させるためには目標を設定することが重要です。もし飼っているねこちゃんが肥満であると診断された場合、現在の体重から15%減量することを目標にしましょう。しかし、急激なダイエットは厳禁です。肝リピドーシスは急激なダイエットが原因になる場合があります。週に1~2%の減量が良いとされています。
 ダイエットを成功させるために大事なことはなんでしょうか?ねこの肥満に関する獣医師に対するアンケートでは、最も大事なことは食事療法であり、次に大事なことは家族の協力であると述べられています。
 食事療法は「一日のねこちゃんのごはんの総量」を決めることから始めましょう。急激な減量を避けるために「いま与えているごはんの総量」を計算します。その総量を参考に少しだけ減らした量を「一日のねこちゃんのごはんの総量」とします。一日のごはんの回数は3~4回に分けるといいでしょう。
一週間後、ねこちゃんの体重を測ります。もし、一週間前に比べて体重が1~2%より痩せてしまった場合や、逆に変化がない、太ってしまった場合は、もう一度ごはんの総量を決め直します。それでもダイエットが成功しない場合は、市販のねこちゃんのダイエットフードを使用するという手もあります(このダイエットフードとは総合栄養食でかつ、ダイエット効果をうたうものを指します。獣医師の処方による食事療法食ではありません)。一般的にこれらダイエットフードは食物繊維などにより、かさを増しているごはんになります。しかし、ダイエットフードはねこちゃんの嗜好性が低いので、ごはんを食べなくなってしまうことがあると言われています。ですので、急にごはんを切り替えるのではなく、はじめは少しだけいままでのごはんに混ぜ、徐々に切り替えていきましょう。焦りは禁物です。ゆっくりとすこしずつが大事です。
 ねこちゃんのダイエットに重要な家族の協力とはなんでしょうか?これは端的に言えば、「かわいそうだからの抜け駆け」をなくすことです。ダイエット中のねこちゃんは、お腹が空いておやつやごはんをねだりにくるかもしれません。肥満による病気の大変さを知る飼い主さんなら、心を鬼にしておねだりを断ることができるでしょう。しかし、家族の方はおねだりされたら「かわいそうだから」とおやつをあげてしまうかもしれません。「かわいそうだからの抜け駆け」でダイエットは失敗してしまいます。
ねこちゃんのダイエットを行う場合、なぜダイエットを行うのか?肥満になるとどんな病気のリスクが上がってしまうのか?といった話を家族全員で共有する必要があります。ねこちゃんは大事な家族の一員です。そんなねこちゃんの健康のために、家族一団となってダイエットを行いましょう。

猫の食事療法食

 獣医師により病気の治療のために処方される食事療法食というものがあります。これは病気の治療のために必要な栄養が特別に配合されたものです。体重の減量が必要なねこちゃんのために開発された食事療法食もありますが、けして独断で使用してはいけません。食事療法食は場合によっては、病状を悪化させ得るものです。もし、ねこちゃんのダイエットに食事療法食が使えないか気になる場合は、ぜひかかりつけの獣医師に相談して下さい。経験と知識の豊富な獣医師による、より正確なアドバイスが貰えるでしょう。

猫の肥満と食事療法

まとめ

 近年、肥満のねこちゃんが増えています。飼い主さんが気付かない隠れ肥満のねこちゃんも多くいます。肥満は糖尿病や肝リピドーシスなどの治療が難しい病気を引き起こす場合があります。肥満には食事療法によるダイエットが重要です。しかし、家族の協力がないとダイエットは失敗してしまうかもしれません。肥満に対する正しい知識を家族で共有することが大切になります。
 かわいいねこちゃんに我慢をさせることは、飼い主さんにとってもつらいことです。美味しいものを満足するまで食べて欲しいと思ってしまうことは仕方がないのかもしれません。しかし、健康に長く生きてくれることこそ、ねこちゃんと飼い主さんの人生にとって最も大事なことです。飼い主さんの愛猫ライフがいつまでも続くように祈っています。

猫の肥満と食事療法
ページ先頭へ