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猫の免疫介在性溶血性貧血って何?怖い病気の症状から治療まで

獣医師
相澤啓介
[記事公開日] 2020-05-11 [最終更新日] 2020-05-11
免疫介在性溶血性貧血は自己免疫性溶血性貧血とも呼ばれる疾患です。自己の免疫システムの異常によって赤血球が破壊される疾患ですが、病名が長くて聞きなれない分、いまいちピンと来ない方もいるのではないでしょうか。本記事では猫における免疫介在性溶血性貧血の症状、診断、治療から予後まで解説していきます。頭の隅に入れて頂き、万が一の時に素早い対応が出来るようにしていきましょう。
猫の免疫介在性溶血性貧血って何?怖い病気の症状から治療まで
免疫介在性溶血性貧血という疾患を聞いたことがありますか。

免疫介在性溶血性貧血は、抗体や補体といった免疫システムが自己の赤血球を攻撃して破壊することで貧血を引き起こす疾患です。
貧血はどんどん進み、命の危険もある怖ろしい病気です。
しかし、病名を聞いただけで疾患の全体像を掴める方はごくわずかです。

本記事を最後まで読んで頂き、少しでも免疫介在性溶血性貧血という病気の理解を深めて頂けたら幸いです。

猫の免疫介在性溶血性貧血の原因

免疫介在性溶血性貧血は、基礎疾患や随伴疾患の有無により特発性と続発性に分類されます。
猫の場合は、猫白血病ウイルス感染による続発性の免疫介在性溶血性貧血が多いとされ、特発性のものは稀です。

免疫介在性溶血性貧血では自らの赤血球を攻撃する抗体、いわゆる自己抗体が産生されます。
自己抗体酸性のメカニズムにはいくつかの要因が考えられています。
まず免疫応答の異常によるものは、本来自己を攻撃する抗体は産生された段階で排除されますが、これを排除する監視機構に何らかの問題があるパターンです。
もう一つは、赤血球の表面が傷害されることで血球内に隠れていた新たな抗原が露出したり、赤血球表面に付着した微生物や薬剤に反応して抗体が産生されてしまうパターンです。

いずれも、まだはっきりとわかっていないことも多く、研究が続いています。

猫の免疫介在性溶血性貧血の症状

猫の免疫介在性溶血性貧血の症状は非特異的で、貧血による食欲不振、歯茎などの可視粘膜の蒼白、疲れやすくなるなどが見られます。
また、発熱、嘔吐、血色素尿などが見られる場合もあります。

その他、いくつかの合併症を引き起こします。

・免疫介在性血小板減少症
これらが同時に見られるものをエバンス症候群と言います。
血小板の減少により止血障害が生じ、皮膚や粘膜の点状出血、血尿、血便、吐血、喀血、鼻出血、前眼房出血が見られます。

・播種性血管内凝固
全身の細小血管内に血液凝固を生じる緊急の病態です。
様々な臓器に生じた血栓による症状が認められます。
腎不全に伴う無尿、乏尿、呼吸不全、不整脈、ショック、肝機能不全や中枢神経症状などが挙げられます。

猫の免疫介在性溶血性貧血って何?怖い病気の症状から治療まで

猫の免疫介在性溶血性貧血の診断

猫の免疫介在性溶血性貧血では、いくつかの検査を行うことで多角的に診断します。

・全血球検査
血管内溶血のために、貧血を示すヘマトクリット値の低下が見られます。
また骨髄から若い赤血球が動員されるため、網赤血球数の増加が見られます。
発熱により白血球の増加が見られる場合もあります。
血小板の著しい現象が起こっていないかも重要です。

・血液塗抹検査
血液をガラスの板に垂らし、顕微鏡で観察します。
猫の免疫介在性溶血性貧血では、赤血球の自己凝集が認められることが多いと言われています。
また、細胞膜の傷害を受けた球状赤血球の出現は診断上価値が高いとされています。

・血液生化学検査
血管内溶血によって高ビリルビン血症が見られます。
また猫では肝リピドーシスでも溶血性貧血が引き起こされるため、肝機能の評価も行います。
同時に、低リン血症による貧血の除外も行います。
・クームス試験
赤血球表面に結合している抗体、あるいは抗体と補体の組み合わせを検出する検査です。
すなわちクームス試験陽性は、赤血球表面に抗体が結合していることを示唆し、自己抗体による赤血球の破壊が起こっていると考えられます。
しかし猫においては、猫白血病ウイルスなどの感染に伴い、クームス試験陽性となることがあるため、注意が必要です。

・微生物学的検査
猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルス感染の有無を確認します。
また他に貧血を示す微生物であるヘモプラズマの感染の有無を確認し、除外します。

・尿検査
尿色の異常が確認された場合、それが血尿なのか血色素尿なのかを確認します。

猫の免疫介在性溶血性貧血の治療

猫の免疫介在性溶血性貧血の治療は非常に困難であり、症状の重症度に合わせて複数の治療法を組み合わせて行うことがあります。

・グルココルチコイド
導入療法として第一選択となる治療法です。
高容量のステロイドを投与することで免疫機能の抑制を期待します。
早ければ48時間~72時間以内に反応が見られると言われていますが、2週間経過しても反応が見られない場合もあります。
貧血改善の様子を確認しながら投与量を徐々に減らしていくのが一般的です。

・免疫抑制剤
ステロイド投与によって反応が見られない場合に、免疫抑制剤の投与を検討します。
免疫抑制剤は効果発現までに10日~2週間を有するため、投与を開始したからといってすぐに症状の改善が認められるわけではないので注意が必要です。

・ヒト免疫グロブリン療法
免疫細胞の一種であるマクロファージの活性を抑制すると言われています。
ヒト医療においても自己免疫疾患の治療に用いられており、獣医療でもその効果が期待されます。
実際に効果が得られたという報告もあります。

・輸血
重度の貧血は命を脅かします。
治療にも体力が必要なため、状態を一時的に改善するために輸血を行うこともあります。
輸血の際には、ドナーの確保及びドナー血液との適合検査を行うことになります。

・脾摘
脾臓は赤血球や血小板の破壊、抗体産生において重要な器官です。
よって外科手術によって脾臓を摘出することによって貧血が改善することがあります。
薬剤療法の効果が十分でない場合や、再発を繰り返す場合などが適応となります。

・サイトカイン療法
顆粒級コロニー産生因子(G-CSF)やエリスロポエチン(EPO)が用いられることがあります。
これらはいずれも造血促進効果が期待されています。

猫の免疫介在性溶血性貧血って何?怖い病気の症状から治療まで

猫の免疫介在性溶血性貧血の予後

重度の血色素尿や、免疫介在性血小板減少症や播種性血管内凝固などの合併症が起こっている場合は予後不良と言われています。

また、治療によって貧血の改善が見られた後でも、ステロイドや免疫抑制剤は長期間、中には一生涯にわたって投与する必要があります。
これら薬剤によって適切な疾患のコントロールがなされている場合は予後良好です。

しかし再発した場合、初発の時より薬剤が聞きにくくなっていることが多く、予後不良となります。

そのため見た目上健康でも、1ヵ月に一度程度は検診を受けましょう。

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