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意外と知らない 犬と猫の違い

ペット飼育管理士
増田暢子
[記事公開日]  [最終更新日]
犬と猫は、共通の祖先から分岐して進化しました。共通の祖先は森の中で暮らす小型の肉食獣でした。猫は森に残り、犬は草原へ出て進化してきたのです。この違いが、犬と猫の体の構造や習性に違いを生み出してきました。犬と猫の違いを正しく理解し、それぞれに快適な生活環境を用意しましょう。
[ 目次 ]
意外と知らない 犬と猫の違い

犬と猫の進化を比べてみる

今回は、私たちの身近で一緒に暮らしている犬と猫を比較し、その違いを見ていきたいと思います。犬と猫の違いを知ることで、犬には犬の、猫には猫の、それぞれにふさわしい生活環境や接し方をすることで、より彼らと良い関係を築いていけると考えるからです。

犬と猫の違いを理解するためには、それぞれの進化を比べてみる必要があります。現生する哺乳類を分類すると、単孔目(カモノハシ等)、有袋目(カンガルー等)、被甲目(アルマジロ等)、有毛目(ナマケモノ等)、海牛目(ジュゴン等)、長鼻目(ゾウ等)、管歯目(ツチブタ等)、齧歯目(ネズミ等)、ウサギ目(ウサギ等)、霊長目(サル・ヒト)、無盲腸目(モグラ等)、翼手目(コウモリ等)、食肉目(犬・猫等)、奇蹄目(サイ・ウマ等)、鯨偶蹄目(キリン・クジラ等)の15の種類に分かれます。

上記の通り、犬も猫も共に食肉目というグループに属しています。食肉目というグループを分かりやすく言うと、肉食の哺乳類のグループです。もう少し詳しく説明すると、肉を切り裂いて食べることに適した裂肉歯を持つ動物のグループです。

進化系統樹を辿っていくと原始生物に行き着きますので、全ての生物は皆同じ祖先から分岐して進化したと言ってしまえばそれまでですが、もっと近縁の関係で見ても、犬と猫は同じ祖先から分岐した動物なのだと言える訳です。例えて言えば、猿と人間が同じ祖先から分岐して進化したのと同じような関係ということになるでしょう。

犬と猫の共通の祖先は、約3500万年前のミアキスだと考えられています。ミアキスは森の中を主たる生活場所としていた小型の肉食獣で、イタチやジャコウネコに似たような細長くてスマートな外観をしていました。

ミアキスから分岐した動物達は、それぞれ進化をして現存する犬、猫の他、アライグマ、クマ、イタチ、ジャコウネコ、ハイエナになりました。この進化の過程で、犬は森を出て草原で暮らすようになり、猫はそのまま森の中で暮らし続けました。この犬と猫の進化の違いが、現在の犬と猫の体の構造や習性の違いとなって現れているのです。

草原で暮らすようになった犬は、草原での生活に適した体の構造や狩りの方法を身につけていきました。そして森林の中で暮らす猫は、森林での生活に適した体の構造や狩りの方法を身につけていったのです。

草原は森林と異なり、広くて開けた環境なので、身を隠す場所が少ないことが大きな特徴です。そのため、獲物を狙っている時でも相手から隠れることができません。そのため、犬は高速で走って獲物に近付き、追いかけて狩りをするようになりました。この狩りの方法は単独では難しいため、集団で獲物を追いかけて狩りをするようになりました。そして、最後は逃げ回って弱った獲物の喉に噛み付いて、相手を窒息させます。

森林は、草原とは異なり、高い木や草むらがたくさん生い茂っています。そのため、猫は狩りの際に身を隠し、獲物を待ち伏せする方法を身につけました。待ち伏せをするのですから、当然集団ではなく、単独での狩りの方が成功率が高いはずです。そのため、猫は主として単独行動を取るようになりました。また、身を隠している時に相手に見つからないように、普段は爪を隠して音を立てずに歩いたり、高い木の上にも登れるような体の構造を得ていきました。また、猫が獲物を仕留める際は、獲物が元気な状態であるため直接喉に噛み付いて窒息させるのは大変です。まずは前足で相手を抱えて押さえ込んでから、喉に噛み付くという方法を取るようになりました。

犬と猫の体の構造を比べてみる

前述のような進化の背景により、犬と猫の体の構造には、下記のような違いができました。

1. 筋肉
犬は長時間走り続けられる、持久力のある筋肉を身につけました。
猫は、長時間走り続ける持久力はありませんが、素晴らしい瞬発力とバランス力を身につけました。

2. 爪
犬は、相手から身を隠す必要がないため、足音を気にする必要がありません。それよりも早く走れることの方が大切です。そのため、犬の爪は常に出っ放しの状態で、猫のように隠すことができません。
逆に猫は、早く走ることよりも足音を立てないことの方が大切です。そのため、猫の爪は普段は引っ込んだ状態で足音を立てずに歩き、相手を抱え込んで捕まえたり木に上ったりする時には鋭い爪を出して使えるようになりました。

3. 前足の構造
犬は、鎖骨が退化して無くなりました。
しかし、猫にはわずかですが鎖骨が残っています。また、前足を内側に捻ることができるような構造になっています。これらの事で、猫は前脚を使って獲物を抱き抱えたり、木に上る時に木の幹に抱きついたりできるようになりました。

4. ジャンプ力
犬は平らに開けた草原で暮らすため、高いところに飛び移る必要がありません。そのため、基本的には猫のようなジャンプ力はありません。
猫は、木の上も重要な生活環境でしたので、驚く程のジャンプ力を身につけました。

犬と猫の習性を比べてみる

前述の進化の背景は、習性についても下記のような違いを生み出しました。

1. 体臭
犬は隠れる必要がないため、特に体臭を気にしません。
しかし、猫は相手に見つからないように、元々体臭があまりありません。なおかつ、常にグルーミングをして体臭を消すようになりました。

2. 集団行動と単独行動
犬は群れで狩りを行うため、普段から集団を作って暮らすようになりました。集団で暮らすためにはリーダーが中心となり、ルールの下に秩序を保つ必要があります。そのため、犬には人とよく似た社会性が身につきました。
野猫の場合は、同じ縄張りを共有する猫同士で協力して子育てをするようなケースもありますが、基本的に猫は単独行動です。そのため、猫にはリーダーという概念がなく、親子関係を除けば、基本的には相手とは常に対等な関係で、少し距離をとって行動する習性があります。

3. コミュニケーション
犬は人と良く似た社会性を持っていますので、群れの中で自分と相手の関係を意識しながら暮らしています。そのため、相手とのコミュニケーションも、相手にわかりやすくなっているようです。
しかし、猫は基本的に単独行動をとり、相手との関係は通常の場合対等です。しかも、相手とは常にある程度の距離感を持って接します。そのため、猫は自分の感情をあからさまに表に出すことが少ない傾向にある様です。
ただし、この辺は犬や猫の個体差もあるため、一概に論ずるのは難しいようです。

4. 運動
犬は、持久力のある筋肉を持っており、多くの運動量を必要としています。そのため、人と一緒に暮らしている犬も、毎日数度の散歩をさせ、広い場所でたっぷりと運動をさせる必要があります。
しかし、瞬発力には長けていても持久力のない猫には、長時間の運動は必要ありません。ただし、狭くても良いので、上下に運動できる環境が必要です。棚の上やキャットタワーなどを利用して、自由に上下の運動をさせることで、猫はストレスなく暮らすことができます。

人との関わりの違いを比べてみる

最後に、犬と猫の、人との関わり方の違いを比べてみましょう。

1. 食性
犬は、人と一緒に暮らし始めると、人から残飯をもらって生活するようになりました。しかし、猫と人が一緒に暮らすようになったのは、猫がネズミを捕まえるからというのがきっかけでした。そのため、猫は人と一緒に暮らすようになってからも、ずっとハンターとして自ら獲物を捕まえていました。そのためか、犬も猫も同じ食肉目に属する種なので、歯の構造は肉を切り裂くのに適した裂肉歯なのですが、猫は純粋に肉食性を残しており、犬は雑食性の傾向が強い肉食性に変化してきました。

2. 人の社会における役割の有無
犬は元々の習性として社会性を持っているため、人と共同して仕事をすることが得意でした。そのため、人は犬に役割を与え、その役割に適した犬になるように、数多くの品種を作出したり、トレーニングを行ってきました。そのため、猫と比べて犬は品種の数も多く、体型のバリエーションも豊富です。そして今でも、犬は狩猟犬、牧羊犬の他、盲導犬、聴導犬、警察犬、麻薬探知犬などのように、人の社会の中で役割を持っている犬が多くいます。

犬と猫 それぞれの特性を配慮した生活環境を提供することの大切さ

犬と猫。同じ食肉目に属していますし、古くから人と一緒に暮らしてきている歴史も似ています。もちろん、体の構造や習性で似ている点もたくさんありますが、異なっている点もたくさんあることがわかりました。

犬と猫の違いを正しく理解することで、人は犬とも猫とも一緒に暮らすことができます。そして、違いを理解した上で、それぞれに必要な生活環境を提供することで、彼らを快適に過ごさせることができるのです。

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