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知っておけば安心 犬猫用治療薬の基礎知識

ペット飼育管理士
増田暢子
[記事公開日] 2020-02-21 [最終更新日] 2020-02-21
動物病院で処方された薬が自分の薬と同じだったということはありませんか。動物病院では多くの人用医薬品も使われています。だからと言って、飼い主さんの自己判断で自分の薬を動物達に与えるのは危険です。動物用医薬品についての基礎知識を身につけ、薬を正しく使いましょう。
知っておけば安心 犬猫用治療薬の基礎知識

法律の規定における動物用医薬品の位置づけ

私達人が体調を崩した場合、病院や診療所に行き医師に診察をしてもらった上で、薬を処方してもらいます。医師の処方箋を持って薬局へ行き、薬剤師に処方箋に書かれた通りの薬を調合してもらい、それを医師の指示通りに飲むことで、体調を回復させます。

同じように、愛犬や愛猫などの一緒に暮らしている動物の体調がおかしい場合も、飼い主さんが愛犬や愛猫を連れて動物病院に行き、獣医師に診察をしてもらいます。そして、獣医師の処方に則り、動物病院内で薬を調合してもらい、それを医師の指示通りに動物に飲ませることで、体調を回復させます。

病院が人のために処方してくれる薬も、動物病院が動物達のために処方してくれる薬も、法律の規定に従って管理されています。以前は「薬事法」と言われていましたが、「薬事法等の一部を改正する法律(平成25年法律第84号)」により、名称が「医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に変更されました。まずは、動物用医薬品がこの法律の中でどのように規定されているのかを見てみたいと思います。

まず、医薬品の定義ですが、これは「日本薬局方に収められている物」と定義されています。その上で、「人又は動物の疾病の診断治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具等でないもの」「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの」とされています。ここまでは、人に対しても動物に対しても、医薬品としての定義は対象が異なるだけだということになります。

ただし、人の医療に用いられる医薬品の所管は厚生労働大臣となり、もっぱら動物に用いられる動物用医薬品の所管は農林水産大臣になります。また、動物用医薬品の場合は、医薬品の直接の容器等に「動物用医薬品」の文字を記載することになっています。

最後は区分についてです。人用の医薬品は「処方箋医薬品」「要指導医薬品」「一般用医薬品(第1類、第2類、第3類)」に区分されていますが、動物用医薬品は「指定医薬品」「指定医薬品以外の医薬品」の2区分だけです。「指定医薬品」は農林水産大臣の指定により薬剤師でなければ取り扱えませんので、薬剤師がいない動物用医薬品販売業者等での取り扱いはできないとされています。つまり、一般の飼い主さんがペットショップ等で購入できる動物用医薬品は、全て「指定医薬品以外の医薬品」だということになります。

獣医療現場における人用医薬品の流用の実態

ただし、獣医師は医薬品と動物用医薬品の両方を扱うことができるとされています。そのため、実際に処方される薬の中には、動物用医薬品だけではなく人用の医薬品も含まれているのが実態です。

筆者の家にある愛猫用の薬の容器を確認してみましたが、慢性腎不全用の「セミントラ」の容器には動物用医薬品の記載がありましたが、緩下剤の「ピコスルファート」や目薬の「ネオ メドロールEE軟膏」には動物用医薬品の記載がなく、思った以上に人用の医薬品が処方されているのだなという感想を持ちました。少し古いですが、平成16年2月18日の産経新聞の記事「くすり新世紀30:動物用医薬品」という記事によると、日本でペットに使われている薬の九割は人間用の薬ということで、この記事の趣旨も、動物には動物専用の薬が増える環境づくりを訴えるものでした。

とはいえ、動物病院の処方薬の中に人用の医薬品が含まれていることは事実です。そこで私達飼い主側が注意しなければならないのは、「獣医師の許可なく勝手に人用の医薬品を動物達に投与したり、犬用に処方された薬を似たような症状の猫など、別の動物に投与してはいけない」ということです。

よく「熱があるのだったら、以前もらった解熱剤があるからあげるよ。」などと言って自分に処方された薬を家族や友人にくれる方がいます。もちろんその方は善意からなのでしょうが、一般用医薬品ではないのですから、診察も受けていないのに、体重や体質なども異なるであろう他人用に処方された薬を安易に飲むのは、推奨されることではないでしょう。ましてや生物としての種をまたいで医薬品を適用するのは危険極まりないと言わざるを得ません。同じ薬でも、投与する動物の種類によって吸収したり分解できる速さや能力が異なりますし、効果の強さも違います。また、副作用の出方も動物によって異なるのです。単純に人と動物の体重の差異だけを意識すれば良いという訳ではないということを是非覚えておいてください。

同じ薬でも、犬にも猫にも投与できる薬もあれば、犬には投与できるが猫には投与できない薬もあります。また、獣医師の指示で投与できるけれども副作用などの注意事項を確認し、慎重にならなければ使用できない薬もあるのです。一緒に暮らしている動物達の健康を、安全に守るためには、必ず獣医師と連携した上で治療や投薬を行うようにしましょう。

犬と猫では使用可否が異なる薬の例

ここでは、犬や猫で使用可否が異なる薬の成分について、具体例を出して紹介してみたいと思います。

1. 中枢神経系用薬:オキシコドン塩酸塩水和物
【製品例】
オキシコンチン錠5mg/10mg/20mg/40mg(塩野義) 等
【適用】
犬:問題なし
猫:投与不可
【処方目的】
犬:鎮痛
人:中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛
【注意事項】
副作用としてショック、呼吸抑制、無気肺、気管支けいれん、喉頭浮腫、麻痺性イレウスが起こることがある

2. 解熱・鎮痛・抗炎症・抗アレルギー薬:アスピリンアルミニウム
【製品例】
犬の風邪薬パインスター(内外製薬) 等
【適用】
犬:問題なし
猫:投与不可
【処方目的】
犬:発熱性疾患における解熱・鎮痛・消炎
【注意事項】
妊娠及び妊娠の可能性のある犬への長期連用は避けること

3. ホルモン製剤/内分泌・生殖器系用薬:アカルボース
【製品例】
アカルボースOD錠50mg/100mg[タイヨー](テバ製薬) 等
【適用】
犬:使用不可
猫:獣医師の指示で投与可だが注意事項あり
【処方目的】
猫:2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)の補助治療
人:糖尿病の食後過血糖の改善
【注意事項】
猫では他に適当な治療法がなく、インスリンが枯渇していない場合にのみ使用する。犬はほとんどの場合インスリンが枯渇しているため用いるべきではない

4. 抗菌薬/抗ウイルス薬/抗真菌薬:スルファジアジン、トリメトプリム
【製品例】
トリブリッセン錠480(共立製薬) 等
【適用】
犬:問題なし
猫:使用不可
【処方目的】
犬:気管支肺炎、細菌性下痢症、膀胱炎、術後感染症の予防
【注意事項】
中枢神経症候、消化器障害、皮膚障害等の副作用あり。動物実験で催奇形作用が認められている。犬以外には使用不可

5. 抗悪性腫瘍薬/免疫抑制薬:フルオロウラシル
【製品例】
ルナコールDS5%(沢井) 等
【適用】
犬:問題なし
猫:使用不可
【処方目的】
犬:乳(腺)がん、消化管腫瘍、扁平上皮がん
人:胃がん、結腸癌、直腸がん、乳がん、子宮頸がん(錠剤のみ)の諸症状の緩和。皮膚悪性腫瘍(軟膏)
【注意事項】
猫では致死性の神経毒性がみられる可能性があるため使用禁忌

動物用医薬品の後発医薬品について

人の医薬品の場合、特許が切れると複数の後発医薬品(ジェネリック医薬品)が出されます。後発医薬品は特許料を支払う必要がないため、特許を持っていた先発医薬品よりもその分安価に手に入れることができます。

動物医療の場合は全額負担しなければならないため、動物医薬品も後発医薬品が増えてくれれば嬉しいのですが、動物病院では後発医薬品の話を耳にすることがほとんどありません。なぜでしょうか。

それは、人の医薬品と比べて、動物医薬品の市場が小さいからです。さらに、動物医療は基本的に自由診療のため、行政からの後発医薬品を使用せよとの指導が少ないということも影響しているようです。さらには、動物医薬品の価格はメーカーが決めるため、特許切れの薬品を値下げすることで後発医薬品に対抗するということも、人の医薬品と比べると少ないというのが現状のようです。

動物用医薬品を安全に使用するための注意事項

これまで書いてきた通り、同じ薬であっても他の動物に流用することは高いリスクを伴います。それでは、獣医師に処方してもらった薬を処方通りに投与する際に気をつけるべき注意点についても触れておきましょう。

1. 処方された量と回数(間隔)を守ること
既にご説明してきた通り、その薬がその動物に対してどのような速度でどのような効用を及ぼすのかを考えた上で、薬の量や回数が指示されています。特に回数は、1日のうちにその回数を飲ませれば良いということではなく、何時間間隔で飲ませるべきかを考えるべきです。1日1回の場合は24時間おき、1日2回の場合は12時間おき、1日3回の場合は8時間おきとなるように意識して投薬するようにしましょう。そうすることで、血液中の薬の濃度がベストな状態で維持されるため、愛犬や愛猫の状態を安定させることができるでしょう。

2. 飼い主さんの判断で勝手に投薬を中止しないこと
薬を飲ませて様子を見ていると、愛犬や愛猫の症状が改善され、すっかり元気になったように見えることがあります。その際、獣医師から「症状が改善されたら投薬をやめても良いです」と言われている場合は別ですが、そうでない場合は獣医師の判断を仰いだ上で投薬をやめるようにしましょう。途中で薬をやめたために、再発、悪化を繰り返すことになる場合もあれば、抗生物質や抗菌薬を途中でやめてしまったために耐性菌が発生するリスクが高くなるからです。また、薬を断つためには少量ずつ減らしていかなければ大きな副作用を起こす薬もあります。

獣医師からの指示を守って正しく投薬することで、愛犬や愛猫への負荷を最小限にした上で、きちんと治療できるようにしてあげましょう。

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