犬の会陰ヘルニアと緊急時の外科的処置
今回は膀胱脱を起こし、排尿困難になった場合の外科的処置をご紹介していきます。

排便もかなりの日数経ってから、少量づつ出たら以前に比べて出が悪いと思うことはありせんか?
そんな時 もしかすると会陰ヘルニアという病気かも知れません。今回は緊急を要する会陰ヘルニアについてご紹介していきます。
犬の会陰ヘルニアとは?
会陰ヘルニアは、肛門周りにある筋肉の間から、腹腔内の腸管や脂肪が突出する疾患です。肛門をまたいで両側性に発生する場合が多いですが、片側のみに発生することもあります。

原因
原因としては肛門周りの筋肉が薄くなり、弛緩してきてしまう為に、その隙間から膀胱や腸などの臓器や脂肪が出てきてしまい肛門周りの突出が見られる疾患です。筋肉が菲薄化してしまう原因に男性ホルモンが関与しているといわれ、未去勢の中高齢の雄犬で多く発生する傾向にあります。

症状
症状として、各種臓器や脂肪が飛び出ることで排便や排尿に支障をきたしますが、膀胱が飛び出て反転している場合などは排尿が困難になり一刻を争う事態になります。
また、直腸脱などがある場合や直腸の脇に憩室などができてしまっている場合、排便も困難になってきます。

緊急時の外科的処置
まず、排尿困難な場合、カテーテル挿入を試みて排尿ルートを確保します。
しかし、膀胱が反転していたらする場合 挿入が困難であり無理やりやると膀胱破裂や尿道損傷を伴う場合があるため難しい場合には外科的処置を行うべきでしょう。
外科的整復はいくつかの方法を組み合わせます。
①未去勢の場合には去勢手術実施。
②腹腔内から膀胱を引っ張ってきて腹壁へ固定。
③直腸脱を起こしている場合は直腸固定術実施。
④内閉鎖筋等でのヘルニア孔整復。
⑤筋肉等を使わずメッシュなどの人工物によるヘルニア孔整復。
⑥直腸憩室がある場合憩室整復。
これらを組み合わせながら手術を実施していきます。
両側一度に手術する場合、尿失禁などのトラブルが出る場合がありますが、経験上やむ得なく実施する場合もあります。
術後管理
術後しばらくは柔らかい便が出るように便を柔らかくする薬の投薬等を行います。
長期にわたり会陰ヘルニアを放置していた場合などは、回復が悪くすぐに元の状態に戻ることができませんので気づいた時点で早めに処置することをお勧めします。

まとめ
定期検診などで排便等に問題がある場合、直腸憩室等がないか直腸検査にて確認しておくのもその後の治療において極めて重要です。
適切な診断と処置により速やかに改善の一途をたどりますので 覚えておいていただければと思います。
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