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馬尾症候群について

獣医師
高木俊輔
[記事公開日] 2019-05-07 [最終更新日] 2019-09-18
馬尾症候群は、腰からお尻にかけての背骨が狭くなったり不安定になることによって神経を圧迫されてしまい、後ろ足の麻痺や排便・排尿の異常などの神経症状を起こす病気の総称です。
先天的に背骨が狭かったり、腫瘍が神経を圧迫していたりと、原因は様々です。しかしながら、ほとんどの場合は年をとるに連れて周囲の組織が変性してしまい神経を圧迫することで生じます。この病態を「変性性腰仙椎狭窄症」といい、大型犬の中齢期以降でよくみられます。
馬尾症候群について
馬尾症候群は、椎間板ヘルニアによく似た病気です。どちらも神経が圧迫されることにより症状が出てくるのですが、圧迫が起こる場所に違いがあります。今回は馬尾症候群について取り上げ、原因、なりやすい犬の特徴、症状、診断、治療について解説します。

馬尾って何?

背骨に沿って走る神経はとても太いのですが、腰から後ろは細い神経が束のようになって走っています。それが馬の尻尾に似ているため「馬尾」と呼ばれています。どの辺の位置から神経が細くなっているかは、犬のサイズによって変わります。そして馬尾の神経は、後ろ足や尻尾、排便や排尿に関与しているものがあるため、症状もその部分に関連したものになります。

原因は?

先天性と後天性があります。先天性としては骨の奇形や関節の異常がありますが、症状が出てくるのが中齢期以降ということも少なくありません。先天性よりも後天性の方が多く、後天性の原因としては、炎症・脱臼・骨折・腫瘍などがあります。ただしこれらは稀で、実際には加齢による周囲の組織の変性が原因となることがほとんどです。この変性は、腰からお尻にかけての関節が不安定であるために起こると考えられています。また、馬尾症候群の犬では、同時に椎間板ヘルニアを起こしていることも多いのです。

どんな犬がなりやすい?

大型犬での発症が多く、小型犬では少ないという傾向があります。ジャーマン・シェパード・ドッグは他の犬種の8倍、この病気になりやすいという報告もあります。他にはゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、グレート・デン、アイリッシュ・セッターなど、平均体重が35キロを超えるような大型犬が好発犬種とされています。犬ではメスに比べてオスの方が1.3〜5倍発症しやすいという報告があります。日本では、フレンチ・ブルドッグ、トイ・プードル、ヨークシャー・テリアなどの小型犬や、ウェルシュ・コーギーでの発症がみられています。通常は6〜7歳以上の中齢以降での発症が多いです。

症状は?

神経が圧迫されることによる神経症状がみられます。様々な症状がありますが、よくみられる症状は次のようなものがあります。
・後ろ足の爪が削れる
・後ろ足を引きずっている
・急に後ろ足が細くなってきた
・階段を登れなくなった
・抱っこすると、腰のあたりを痛がる
・尻尾の動きが悪くなった
・尻尾を噛むようになった
・おしっこを漏らしてしまう
・便を漏らすようになった
先述したように、後ろ足や尻尾、排尿や排便に関連した神経が圧迫されるため、そこに関連した症状が多いのが特徴です。また、急性症状の場合、片側の後ろ足を挙げる犬もいて、整形外科の病気との区別が難しいこともあります。

診断は?

最初は歩き方の観察や、神経学的検査を行なって調べていきます。X線検査では骨の奇形や腫瘍、脱臼や炎症がないかを確認します。それだけで診断がつかずそれ以上の検査が必要であれば、CT検査やMRI検査、筋電図検査などに進みます。椎間板ヘルニアなどの痛みと神経症状がみられる病気との見極めをすることが非常に重要です。

治療は?

内科治療と外科治療があります。症状が痛みだけで、運動機能の異常がない場合は非ステロイド系消炎鎮痛剤を中心とした内科治療を行います。この場合は、1〜2ヶ月は安静にしておくことが多いです。ただし、負担がかからない程度に軽い散歩やリハビリテーションは行います。ビタミンB剤や抗酸化剤も併用することが多いです。非ステロイド系消炎鎮痛剤でのコントロールが難しい場合は、ステロイドを使用することもあります。
痛みに加えて軽度の運動障害がみられた場合も、最初の2週間は内科療法を行うことが多いです。それでも改善がみられなかったり、症状が悪化するようであればなるべく早期に外科治療に進みます。症状が重度になってから手術を行うと、症状の改善が遅くなったり治らない場合もあるため、手術を行うタイミングは非常に重要です。

リハビリテーションは?

内科治療の一つとして、また外科治療後のケアとしてリハビリテーションは非常に重要です。痛みの緩和、感覚の改善、麻痺の改善、筋肉の回復を目的として行います。リハビリテーションは非常に多岐にわたります。冷やしたり温めたりといった温度療法、マッサージ、電気刺激、超音波、レーザー、運動療法などが一例として挙げられますが、何をどのように行うかは症状の種類や重症度によって異なります。

最後に

馬尾症候群という名前はあまり聞きなれないものだと思います。動物病院でも、整形外科の専門病院でなければそれほど頻繁に診察する病気ではありません。また、他の神経病や整形外科の病気との区別も難しいこともあります。しかしながら、小型犬でも発生はみられるため飼い主のみなさんにも病気の知識を身につけていただきたいと思います。

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